脳血管内治療とは?
カテーテルと呼ばれる細いチューブを太ももから挿入し、脳の中の血管まで誘導します。そこから様々な治療を施行することが可能です。カテーテル室で横になっていただき、太ももの部分を消毒して、清潔な布をかけます。
太股部分に痛み止めをして、そこからガイディングカテーテルを挿入します。
頚部までカテーテルを挿入して、そこからソウメンのように更に細いマイクロカテーテルを挿入します。
これを病気の部位に誘導して治療をしていきます。治療にはコイルを用いることが多く、これを病変部位に挿入していきます。
十分にコイルを詰めたあとはカテーテルを抜去して、終了となります。
治療は局所麻酔でもできますが、全身麻酔で行うこともあります。
1.脳動脈瘤について
脳動脈瘤には破裂していない未破裂脳動脈瘤と破裂脳動脈瘤(クモ膜下出血)があります。クモ膜下出血の場合はすぐに治療しないと命に関わります。しかし、未破裂脳動脈瘤を治療するかどうかの判断は非常に難しい判断となります。どうするかのポイントは、破裂率はどれぐらいなのか?と治療リスクはどれぐらいなのか?のバランスにあると思います。極端な話をすると絶対に100%破裂する動脈瘤ならリスクが高くても治療したほうが良いでしょうし、治療リスクが0%の治療であれば、全ての動脈瘤は治療したほうが良いという話になります。破裂リスクについてはUCASのデータが有名です。治療はカテーテル治療なのか、開頭手術なのかでリスクが異なります。担当の先生から十分にご説明を受けて選択されると良いと思います。
簡単にご説明すると、開頭手術(クリッピング)は頭蓋骨に穴を開けて、動脈瘤の根本に洗濯バサミのようなクリップをかけて破裂を予防する方法です。カテーテル手術(コイル塞栓術)は、太ももの血管からカテーテルという細いチューブを動脈瘤に入れて、中からコイルという金属の糸くずを入れていって、コイルを詰めて固めることで破裂を予防する方法です。内服治療や放射線治療では治癒せず、どちらかの手術を施行しない場合は経過観察を施行することとなります。
それぞれの手術には利点と欠点が存在します。印象としては6割程度の患者さんはどちらの治療法でもよく、2割の方はクリッピングがよく、残り2割の方はコイル塞栓術がよいといった印象です。それぞれの利点と欠点を十分にご理解いただいて、経過観察も含めて方針を選択されるのがよろしいかと思います。
<クリッピングの利点>
クリッピングは直接的に動脈瘤を見ながら処置するために、トラブル時の対応が優秀であることと、治療すれば再発しないことが非常に優秀な治療法です。また、必要時にはバイパスを併用することによって血流不足の血管に血液を補うことも可能です。
<クリッピングの欠点>
頭をあけるために、その侵襲が最大の欠点となります。単純に頭をあけるのは嫌!といった理由の方も数多くいらっしゃいます。また、術後出血や感染症はカテーテル治療では少ないので、これらも欠点の一つであると考えています。
クリッピング時の様子
<コイル塞栓術の利点>
一番の利点は、脳を触らずに血管の中から動脈瘤を治療できることです。治療時間も一般的にクリッピングより短時間であることが多く(2時間程度)、入院期間も短く(1週間程度)、体への負担が少ないです。ステントやフローダイバーターの登場により治療可能な動脈瘤の種類も増えております。
<コイル塞栓術の欠点>
脳の血管の中から治療するために、血液と反応して血栓ができ、このために問題が生じることがあります。これを回避するために、抗血小板薬という血液サラサラの薬を1?3週間前から2種類内服していただき、その後も一定期間の内服が必要となります。血液サラサラというと聞こえは良いですが、出血リスクを増やす可能性もありますので、慎重に治療していく必要があります。また、コイル塞栓術は体への負担は少ないですが、クリッピングに比べて絶対に安全であるというわけではありません。よく担当医の説明を聞いていただき、ご理解していただいたほうが良いかと思います。
脳動脈瘤 動脈瘤の中に 治療後
入っているコイル コイルによって動脈瘤が
見えなくなっています
2.頚部頚動脈狭窄について
顎の横にある頚部の血管(動脈)が、プラークといわれるかたまりによって狭窄することをいいます。
プラークは糖尿病や高脂血症、タバコや高血圧などで溜まっていきます。プラークの狭窄が進行すると血液の流れが悪くなって、脳に血が流れづらくなります。その結果として脳梗塞を生じる可能性があります。
頚部のプラークが脳の血管に飛んで脳梗塞になることや、狭窄のために血流が悪くなって脳梗塞に至ることがあります。狭窄が軽度であれば抗血小板薬と呼ばれる血液サラサラのお薬を内服して経過観察する場合もありますが、脳梗塞を起こした場合や狭窄が進行していた場合は脳梗塞リスクが高いために治療が進められます。
<治療について>
治療の選択肢として、内頚動脈内膜剥離術(手術:CEAと呼ばれます)と頚動脈ステント術(カテーテル:CASと呼ばれます)があります。
CEAは頚部を切開して頚動脈を描出して、その頚動脈を切開して中のプラークを摘出します。非常に昔からある手術です。手術は全身麻酔で行われます。
利点としては、プラークを確実に摘出できるので、きれいに血管が拡張します。欠点としては全身麻酔で体に負担がかかること、頚部を操作することにより飲み込みや発声に問題が出ることがあります。
頚動脈を露出したところ
CASは、太ももの血管からカテーテルを通して、狭い血管にステントと呼ばる金属の円柱を挿入して血管を広げる方法です。右の太ももの血管から注射するので、体の負担は少ないです。手術は主に局所麻酔で行われます。ステントを広げただけだと、プラークが脳に飛んでいってしまうので、フィルターという虫取り網を用いたり、風船で血管の流れをとめてプラークを回収する必要があることがポイントです。
利点としては、2時間程度の短時間で低侵襲で局所麻酔でできることです。欠点はきちんと対処しないとプラークが脳に飛んで脳梗塞になってしまうことです。
どちらの治療が良いかは患者さんによって異なります。患者さんとご相談して方針を決めるわけですが、CASを選択される方が多いです。
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