練馬総合病院

診療科・部門一覧

対象疾患

脳神経外科の病気の主なものは、脳卒中(脳血管障害)と脳腫瘍です。

Ⅰ.脳卒中(脳血管障害)

脳卒中は、がん・心臓病と並び3大成人病に数えられ、死亡率で第3位です。患者数では130万人と国民の100人に1人以上で、死亡率第1位のがんの患者数と同じです。このうち血管が詰まって起こるものが、脳梗塞です。血管が破れて起こるものが、出血性脳卒中です。脳梗塞の多くは点滴治療をしますが、太い血管が原因のものには血管吻合術という血流をバイパスする手術や、血栓を取り除く内膜剥離術を行います。これに対して出血性脳卒中は、3分の2が脳出血で3分の1がくも膜下出血です。脳出血は、脳の中の細い血管がもろくなり切れて起きます。また、くも膜下出血は脳の外の太い血管が弱くなって膨らみ脳動脈瘤となり、突然破れて起きます。このため、脳出血では脳の中で細い血管からの出血が広がるので、症状はゆっくりと数十分から数時間かけて脳のその場所の症状が現れます。例えば、手足の麻痺や言葉の障害です。これは壊れた脳の働きですから後遺症として残ります。これに比べ、くも膜下出血では太い血管の高い圧力が一度にかかるので、症状は数分から十数分で急な頭痛や吐き気が第一となります。さらに出血が続くと脳の中心にも強い圧迫が加わり、意識が障害され昏睡状態となります。しかし、こちらは出血が少ない場合には脳の破壊は起きませんから、治療が間に合えば後遺症なく完治します。ただし、両方とも出血が多ければ一回の出血で命を落とす危険性も大きくなります。これらの治療ですが、脳出血では出血した血管は細くてその後に詰まるので、小さなものでは点滴治療をします。大きな出血でこれを取り除くことによって残っている脳を救う場合には、手術(血腫除去術)を行ないます。これに対して、くも膜下出血では動脈瘤は一度破れるとその穴はふさがらず再出血します。2度目の出血では1度目に破れた穴がさらに大きく広がりますから、意識も無くなり呼吸も止まる大出血の可能性が大きくなります。したがって、再出血を予防することが第一です。これが、瘤の入り口をクリップという金属ではさんで血液が入らないようにする手術(クリッピング術)です。瘤の閉塞はカテーテルで行うこともあります(血管内手術)。

これらの出血を引き起こす大きな原因は、どちらも血圧の上昇ですので、予防には高血圧症の治療が大切です。高血圧以外に高脂血症や糖尿病などのメタボリック症候群も動脈硬化の進行を早めて出血だけでなく脳梗塞の危険性も高めるので、これらの治療が必要です。一方、脳動脈瘤は、破裂する前に見つかれば、後遺症もほとんど無く短期間の入院で治療が可能です。これは、脳ドックでも行うMRI検査により簡単に診断することができます。

以下はこれまでに行った脳動脈瘤の手術例です。

1.重症くも膜下出血

この方は50歳代の女性で、前交通動脈瘤の破裂です。
頭部CTで脳の隙間のくも膜下腔に大出血しています。

重症で瞳孔も開き、呼吸も止まりました。大きく頭蓋骨を開き、クリップで瘤の根元をはさみます。

術後の血管撮影で、瘤は消えています。意識も回復しました。

2.未破裂脳動脈瘤

(1)高位後方向き前交通動脈瘤

同じ場所の瘤でも破れなければほとんど症状はありません。頭痛で受診された40歳代の男性です。
血管撮影で、後ろ向きの動脈瘤です。

脳の中心への細い枝を確認してクリップを掛けます。術後2週間ほどで復職されました。

(2)左内頚前脈絡叢動脈瘤

脳ドックで来られた70歳代の女性です。血管撮影で、細い枝の出口に動脈瘤があります。
手足の麻痺や失語症の出やすいところなので、脳波などをとりながらクリップします。

クリップ直前の手術写真です。何も障害なく退院されました。

3.巨大内頚動脈瘤

破れていませんが、大きくなりすぎて目の神経を圧迫して視力低下で見えた60歳代の男性です。頭部MRIです。脳腫瘍のように動脈瘤が視神経を圧迫して、瘤の中で血栓のない所に血液が流れています。

視力もモニターしながら頭蓋骨を貫く頚動脈から瘤を露出してクリップを掛けて、瘤の血栓を取り除き、瘤を切除しました。

術後の血管撮影で、瘤は消失しています。視力も回復し復職されています。

Ⅱ.脳腫瘍

脳腫瘍には頭の中にある細胞からできる原発性脳腫瘍と、からだの他の部位から来る転移性脳腫瘍(つまり、がんの転移)があります。原発性のものは年間で人口1万人あたり1人~2人にできます。転移性は原発性の約1/4~1/5です。しかし、高齢化や脳ドックの普及により両方とも増加しています。脳腫瘍のほとんどの原因は明らかではありませんから予防も困難です。脳腫瘍の症状には、頭蓋という狭い入れ物の中に腫瘍ができて脳に圧力がかかるために起きる症状(脳圧亢進症状と言って、頭痛や吐き気、意識障害など)と、その腫瘍ができた場所の脳の機能が低下して起きる局所の症状があります。どちらも脳出血などでも起きますが、時間経過がゆっくりしていることが多いのは脳腫瘍の特徴です。局所の症状は、脳の上の方では反対側の手足の麻痺やしびれが出ます。後ろの方では反対側の視界が見にくくなります。優位脳(たいていは左です)の中央では言葉が障害されます。脳の下の方では、そこから出る神経の症状として、視力や目の動きと、顔や聴こえや声の麻痺があります。症状のある場合には、大きく育つ前になるべく早めに検査することが大切です。腫瘍の診断はCT検査でたいていは可能です。腫瘍の種類などもMRI検査で判りますから外来で簡単にできます。良性のものは手術で治癒できます。悪性でも手術でできる限り摘出して、その後に化学療法と放射線治療を加えます。

以下も当院の良性脳腫瘍の手術例です。

1.巨大髄膜腫
脳の表面を保護する膜からできる腫瘍で、脳の深部に入り込んでいることもあります。

(1)左側脳室三角部髄膜腫
失語症と右半身麻痺で受診された60歳代の女性です。3次元立体CTで、大きな腫瘍が脳の内部にあります。優位脳の機能をモニターしながら脳の深部から摘出します。

術後の立体CTで、腫瘍は消失しています。症状は軽快し退院されました。

(2)左大脳鎌髄膜腫

傾眠状態で救急搬送されて、右半身麻痺と言語障害も認めた60歳代の女性です。立体CTで、大きな腫瘍が左右の脳の間にあります。左右の大脳の間から摘出します。

術後の立体CTで、腫瘍は全摘されています。症状は消失しお一人で生活されています。

2.大型聴神経腫瘍

耳の神経から出来る腫瘍です。手足のふらつきで受診され、難聴と顔・喉の麻痺も認めた80歳代の女性です。頭部MRIで腫瘍が脳幹部を圧迫しています。顔と喉の神経や、脳の中心の機能をモニターしながら摘出します。

術後のMRIで腫瘍は消失しています。聴力以外の症状はなくご自宅で暮らされています。

3.鞍上部大型下垂体腫瘍
脳から鼻の上に出た下垂体というホルモンの中枢の腫瘍です。めまいと頭痛で見えた50歳代の女性です。MRIで脳の血管を巻き込んだ腫瘍です。左右の大脳の間を通り、脳の血管や神経から腫瘍をはずして摘出します。

術後のMRIで、腫瘍は消失し血管も下垂体も温存されています。元通りの生活をされています。

手術

脳神経外科のほとんどの手術は、髪が生えていて傷跡の見えないところを切って、その下の頭蓋骨を開けます。そして脳のしわの間を切り開いて、内部の処置をします。最後に、頭蓋骨を金属で固定し皮膚を縫い合わせて終了です。術後は1~2週間、入院が必要になります。

もし頭痛その他でご心配がございましたら、気軽に脳神経外科の外来を受診(あるいはご紹介)下さい。脳卒中や脳腫瘍に限らず、脳に異常があるのかないのかの診断からその治療まで、きっとお役に立てるはずです。

治療実績

2016年4月に着任してから2019年上半期までの3年間の実績は、手術例が147例と非手術例が189例の336例でした。手術の主なものは破裂脳動脈瘤クリッピング術12例、未破裂脳動脈瘤クリッピング術27例、脳動静脈奇型全摘術3例と、脳腫瘍全摘術24例(多くは脳深部の巨大な髄膜腫で、うち3例は広範囲頭蓋底腫瘍切除・再建術です。他に5例は悪性脳腫瘍でした)などです。

術前後の機能評価は、破裂瘤では術前は全例が要介助以上のmRS(modified Rankin Scale修正ランキン評価基準)4・5でしたが、術後は社会的自立で良好例(GR: Good Recovery)のmRS2以下が75%です。未破裂瘤では全例で術後に神経学的異常は消失しています。脳腫瘍も全例で症状は改善し、90%が社会的自立以上の良好例です。

非手術例は55%が脳血栓・脳塞栓・脳出血の三大脳血管障害でした。そして入院時は良好例のmRS2以下は7%でしたが、退院時には83%の方が良好例となっています。

手術例・非手術例ともに外傷の1例が死亡し、全入院患者死亡率はそれぞれ0.6%と0.5%です。なお、入院の全例をJND(Japan Neurosurgical Database)に登録済です。

2019年10月に認定開始の1次脳卒中センター(PSC: Primary Stroke Center)も開始と同時に取得いたしました。

術中ナビゲーションおよび術中神経生理モニタリングも症例の蓄積により効果的な応用が可能となり、手術に限らずこれからも患者さんの満足の得られる病状の改善を目標としますので、どうかよろしくお願い申し上げます。

学会発表

2017年10月 日本脳神経外科学会(名古屋) 脳腫瘍手術

2018年 3月 日本脳卒中学会(福岡)          脳動脈瘤手術

2018年10月 日本脳神経外科学会(仙台)   脳腫瘍手術総説

2019年10月 日本脳神経外科学会(大阪)   80歳代の良性脳腫瘍手術

医師紹介

医師名 役職 専門分野
谷口 民樹 (タニグチ タミキ) 科長 脳血管障害 特に脳動脈瘤など
脳腫瘍 特に頭蓋底髄膜腫など
布目谷 寛 (フメヤ ヒロシ) 医員 脳血管障害 特に脳梗塞・脳出血など
外傷・救急 特に重症頭部外傷など
小児 特にモヤモヤ病など

医師詳細紹介

谷口 民樹 (タニグチ タミキ)

科長

経歴 1984年 東京大学卒業 東京大学医学部附属病院
1985年 国立病院医療センター(現.国立国際医療研究センター)
1986年 三井記念病院
1987年 亀田総合病院
1988年 茨城県立中央病院
1989年 東京都立府中病院(現.多摩総合医療センター)
1991年 東京都立墨東病院
1993年 富士脳障害研究所附属病院(副院長)
1995年 埼玉医科大学総合医療センター(講師)
2010年 東京逓信病院(医長)
2016年 練馬総合病院(科長)
専門分野 脳血管障害 特に脳動脈瘤など

脳腫瘍 特に頭蓋底髄膜腫など
所属学会等 日本脳神経外科学会 専門医・指導医
日本脳卒中学会 専門医・指導医
日本脳神経外科コングレス
日本脳卒中の外科学会
日本脊髄外科学会
日本脳神経血管内治療学会
布目谷 寛 (フメヤ ヒロシ)

医員

経歴 1984年 東京医科歯科大学医学部卒業・医学部付属病院脳神経外科
1990年 秀島病院脳神経外科
1995年 藤崎病院脳神経外科
1997年 アリゾナ大学医療センター脳神経外科
1998年 松井外科病院脳神経外科
2013年 旗の台脳神経外科病院(現:旗の台病院)
2020年 練馬総合病院脳神経外科
専門分野 脳血管障害 特に脳梗塞・脳出血など

外傷・救急 特に重症頭部外傷など

小児 特にモヤモヤ病など
所属学会等 日本脳神経外科学会 専門医・指導医
日本脳神経外科コングレス
日本脳神経外傷学会
日本小児神経外科学会
日本脳神経外科救急学会
日本臨床脳神経外科学会
Copyright © 2020 Nerima General Hospital All Rights reserved.