練馬総合病院

診療部

子宮腺筋症とは

子宮の内面を覆っている子宮内膜という組織は卵巣から分泌される女性ホルモン(卵胞ホルモンと黄体ホルモン)の作用を受けて、増殖、剥脱を繰り返しています。この剥がれたときが月経です。

子宮の内面にだけこの子宮内膜があれば何の問題もありませんが、この子宮内膜が子宮の筋肉の中にできることもあります。これが子宮腺筋症です。子宮腺筋症は30代後半から50代にかけて多い疾患で、子宮内膜に類似した組織が子宮の筋層の中にできる病気です。

子宮腺筋症の症状

子宮腺筋症が重症になると、強い月経痛・月経量増加(過多月経)・月経時以外の出血などの自覚症状を引き起こし、痛みは下腹痛だけではなく、足に放散したり、肛門痛として感じたりすることもあります。過多月経も1回の月経で強い貧血を来すほど強くなることもあります。

一方、腺筋症は妊孕性(妊娠する能力)にとって非常に不利に働き、妊娠しにくく、また妊娠しても流産しやすいという特徴があります。女性ホルモンの刺激で病状は進行するため、治療しなければ閉経まで増大し続け、症状は悪化します。

子宮腺筋症の分類

子宮腺筋症には幾つかの分類があります。一般的には、腺筋症は瀰漫性(びまん性:周囲組織に入り込んで行き、境界が不明瞭な状態)の形をとりますが、結節性といって、子宮筋腫のように一部に腺筋症の塊を作る場合もあります。また、この結節の中央部に丁度卵巣にできるチョコレート嚢胞のように、古い血液を貯留することもあります。このようなタイプを嚢胞性腺筋症と呼んでいます。瀰漫性腺筋症に比べ結節性腺筋症は病巣が小さいので診断が難しく、見逃されることがあります。しかし、月経痛などの症状は瀰漫性腺筋症と同じく強いため、強い月経痛を訴えて産婦人科の診察を受けても異常ないと言われることもあります。子宮腺筋症の局在による分類もあります。

子宮の前壁や後壁など、子宮の一部分にできるのは部分性、それに対し子宮全体が腺筋症で置き換えられるものは全周性と呼ばれています。分類に応じて術式を選択するので、治療法との関連からも腺筋症の分類は重要です。

子宮腺筋症の治療

腺筋症の治療法には手術による治療法(手術療法)と薬による治療法(薬物療法)があります。薬物療法は月経痛に対する鎮痛剤の服用以外ではホルモン療法が主となります。 偽閉経療法は、投与中には無月経となるため月経痛は中断し病変の縮小も望めますが治療は最長6ヶ月で終了すれば月経痛も再開します。また低容量ピルや黄体ホルモン療法も症状の軽快が期待できますが腺筋症を治癒させることはありません。

対症療法や薬物療法を行い十分な効果が得られない場合、腹腔鏡下での子宮摘出術を考慮しなくてはいけません。しかし、腺筋症は妊娠の既往が無い女性にも発生することがあり、更に我が国における女性の晩婚化と腺筋症そのものの増加によって、妊孕能(にんようのう:妊娠できる能力)の温存を希望する女性の腺筋症治療は大きな課題となっています。
妊娠希望する患者さんに対しては直近の挙児希望があれば自然妊娠を勧めますが、妊娠に至らない場合は不妊治療を行い、ガイドラインなどに沿って体外受精へステップアップしていきます。しかしそれでも、妊娠に至らない場合、または子宮腺筋症が不妊症または着床障害や不育症の原因となっている可能性があり、流産を繰り返す場合は子宮腺筋症核出術を考慮する対象となります。

以上の背景より、対症療法や薬物療法が無効で子宮の温存希望する患者さんや、不妊治療が奏功しない患者さんに対しては、子宮腺筋症病巣を切除する手術療法が望まれます。この手術により症状の改善が得られ、術後妊娠例も報告されています。

子宮腺筋症の温存手術

子宮腺筋症病変を核出するという術式は、核出すべき病巣が正常組織と明瞭に識別され、しかも機械的に分離可能な場合に成立するのですが、多くの腺筋症組織は正常子宮筋の中に複雑に入り込んでおり、境界が不明瞭で、正常の子宮筋と機械的に分離できません。術前のMRI撮影はその局在を知る大きな手がかりになります。

さらに腺筋症組織は正常子宮筋に比べて硬いので、術中に触診によって腺筋症の局在を知ることができます。特に、術中に核出範囲を決める場合には、触診で硬い部分があれば腺筋症が残存し、なければ正常筋層であるとほぼ正確に判断できます。また、切除面の色調も腺筋症か正常の子宮筋層かの判断材料となるため、通常は開腹手術を推奨しています。

術式は腺筋症の種類によって使い分けています。結節性腺筋症や嚢胞性腺筋症といった局所に限定した子宮腺筋症に対しては、病巣部分を中心に周囲の腺筋症を切除し、欠損した子宮筋を縫合閉鎖する方法で行います。瀰漫性で部分性の腺筋症に対しては、腺筋症病巣を確実に切除した後、子宮形成術によって子宮を正常の形に近づけるように作り直す方法で行います。全周性の腺筋症の場合には、全ての病巣を切除することは不可能ですので、子宮を非対称性に縦断し、その切断面から両側の腺筋症病巣を切除した後、再び子宮を縫合して単一化する方法で行います。

※詳しくは当院産婦人科までお問い合わせください。            練馬総合病院 産婦人科

Copyright © 2020 Nerima General Hospital All Rights reserved.