正常圧水頭症(手術で良くなる認知症)について
高齢化社会に伴い、認知症の患者さんが増えています。認知症にはいくつかタイプがあり、正常圧水頭症という病気が原因で認知症を起こしていることがあります。この場合、手術によって認知症や歩行困難の症状が改善する可能性があります。正常圧水頭症の患者さんは、典型的には認知症、歩行困難、尿失禁を来すといわれています。ただ、尿失禁は他の二つと比べて発生頻度が低い印象があります。
・「最近ぼーっとすることが増えてきて、歩行がおぼつかなくなってきた」
・「最近歩幅が広く、ヨタヨタ歩くようになった。転びやすくなった」
こういった症状がある場合は、正常圧水頭症の疑いがあります。
正常圧水頭症の説明
正常圧水頭症とは、どういう病気でしょうか。実は、人間の脳は頭蓋骨の中で乾燥した状態で存在しているのではなく、髄液という無色透明の液体に浸されているような状態で存在します。また、脳の中には脳室という、髄液が貯留している空間があります(図の緑色の部分)。髄液はずっと同じ髄液が溜まっているのではなく、常に新しい髄液が産生され、古い髄液は吸収され、脳の中を循環しています(温泉に似ている、とよく説明します。)
正常圧水頭症では、脳の中にある髄液が何らかの原因で溜まりすぎてしまいます。原因は、脳の病気(脳出血、脳の外傷、脳腫瘍)であることもありますが、はっきりした原因が分からない場合(特発性)の方が多いかもしれません。
正常圧水頭症の治療
正常圧水頭症は脳に溜まりすぎた髄液を抜く、シャント手術という手術を受けることで改善することが見込まれます。シャント手術には上記の通り3つの手術手法がありますが、脳に溜まりすぎた水をチューブを介しておなかの中、もしくは血管の中に排出するルートを作る手術です。どの手法が良いかは、患者さんの基礎疾患などによって異なります。手術時間は患者さんにもよりますが、1時間前後のことが多いです。また、手術に伴う入院期間は1週間程度になります。