泌尿器科紹介
当院の泌尿器科は、泌尿器科の疾患全般を扱います。頻尿・失禁などの排尿障害、血尿、下腹部の痛み・腫れ・違和感、前立腺肥大症、尿路結石症、泌尿器科腫瘍(癌)、尿路感染症などなど、さまざまな泌尿器科疾患の検査・診断・治療を行います。中でも尿路結石症の治療は、2012年に結石センターを設立し、豊富な実績を有しています。
尿路結石症の治療
前立腺癌 早期発見のために(前立腺生検)
レーザーによる前立腺肥大症治療
お知らせ(最終更新日 2023/8/18)
主な手術実績
医師紹介
尿路結石症の治療
尿路結石症は、尿管・膀胱・尿道に至る尿の通り道に結石ができる病気で、近年増加しており、食生活の欧米化が原因ともされています。尿路結石症は、腰やお腹の激しい痛みや血尿などを起こすことがあります。また、結石が尿とともに自然に排出されない場合には、腎臓の機能低下につながることもあり、手術による破砕が必要となります。
当院の尿路結石治療(手術治療)は、ESWL(体外衝撃波結石破砕術)とTUL(経尿道的尿路結石破砕術)を2つの柱にしています。
ESWL(体外衝撃波結石破砕術)は、音波の一種である衝撃波を体の外から結石に向けて照射し、筋肉や他の臓器を傷つけることなく、結石のみを細かく破砕する治療法です。砂状に破砕された結石は尿とともに自然に体外に排出されます。無麻酔で行うので、日帰りでの治療が可能です。
副作用や合併症も少なく、結石治療の第一選択の一つです。当院は練馬区内で、ESWL装置を有する唯一の医療機関です。
当院では現在、スイス ストルツメディカル社製のESWL装置を使用しています。円筒型電磁変換方式により従来の装置よりも大きな破砕エネルギーを発生できることに加え、治療ヘッドが大型のため治療中の痛みが小さく、痛みに配慮して破砕エネルギーを下げることが少なくなりました。これらにより、従来よりも破砕率が向上しています。
TUL(経尿道的尿路結石破砕術)は、尿管鏡という内視鏡を使用し、レーザーで結石を破砕する治療です。入院・麻酔が必要ですが、ESWLと比較して一回の治療での破砕率の高さが特徴です。高性能の尿管鏡の開発で安全性・確実性が向上した結果、近年では全国的にESWLより多く行われるようになりつつあります。当院でも、ESWLをしのぐ件数のTULをおこなっています。
ESWLとTULのどちらの治療を行うかは、結石の位置・大きさ・患者さんの状態・ご希望等から、担当医が総合的に判断いたします。
前立腺癌 早期発見のために(前立腺生検)
血液検査によるPSA測定で異常値を認めた場合は前立腺癌の可能性があり、精密検査が必要です。前立腺の精密検査とは、具体的にはMRI(画像検査)と前立腺生検です。中でも前立腺生検は、前立腺癌の確定診断を付けるための最重要かつ最終検査法です。具体的には、会陰(肛門と陰嚢の間)から細い針を刺して前立腺の組織を採取し、病理診断(顕微鏡による診断)を行います。
当院では1泊2日で前立腺生検を行っております。簡単な流れは以下の通りです。
- 午前中に入院。
- 午後に前立腺生検。
- 生検後は尿道(ペニス)に管(カテーテル)を入れ、尿の様子を観察します。
- 翌朝、尿道のカテーテルを抜いて退院です。
当院では検査施行に際して鎮痛に重点を置き、脊髄麻酔を行っております。その結果、生検に際して疼痛を訴える患者さんはなく、
「もっとつらい検査だと思っていた」との声を耳にします。
早期に前立腺の精密検査を施行すれば、仮に癌が発見された場合でも、多くは早期癌であり、最適な治療により根治も可能です。前立腺癌の治療には手術療法・放射線療法・ホルモン療法等がありますが、悪性度やPSA値が一定の条件を満たしている場合は、体に負担のかかる治療を行わずに経過観察するPSA監視療法(active surveillance)を選択することもあります。PSA監視療法では、定期的に通院して血液検査や再生検により癌の状態を監視し、悪化の傾向が認められた場合に治療を開始することになります。
レーザーによる前立腺肥大症治療
当院では、前立腺肥大症の手術治療として、CVP(接触式レーザー前立腺蒸散術:Contract laser vaporization of the prostate)を行っています。
CVPは、前立腺肥大症の手術治療の一つで、前立腺組織をレーザーで蒸散させることで尿道を広げて、通過障害を改善させる術式です。前立腺を電気メスで切除・核出する術式に比べて出血が少ないことが利点で、抗血小板剤などの血液をサラサラにする薬を内服中の方も、原則として薬を中断することなく手術可能です。
手術では、尿道から専用の内視鏡を挿入し、テレビモニターに映し出された前立腺の映像を見ながら手術を行います。前立腺組織に、内視鏡内の光ファイバーからレーザーを照射して蒸散(気化)させます。レーザーが照射された部分の前立腺組織は、滑らかに溶けて消えるように蒸散し、消失します。蒸散にかかる時間は前立腺の大きさによりますが、30分から2時間ほどです。麻酔をかけて行うので、手術中の痛みはありません。入院期間は1週間以内です。
CVPでは排尿に関する多くの症状の改善が期待できますが、尿の勢いが弱い・尿が出し切れない、などの症状には特に有効です。薬の効果が少ないと感じている方や、薬をずっと飲み続けるのは避けたいと思われている方は、ぜひCVPをご検討ください。また、自力で排尿できずにカテーテルという管を使用している方(尿閉の方)は、CVPによっての排尿機能を回復できる可能性がありますので、ご相談ください。
CVP手術のレーザー照射時のイメージ図
お知らせ(最終更新日2023/8/18)
●当科の髙松医師が、第30回日本泌尿器科学会学会賞を受賞しました。詳細はこちらをご覧ください。
●当科の髙松医師が、ASCO/JSCO フェローシッププログラムに選出されました。詳細はこちらをご覧ください。
●結石センターのページに、「当院のESWLの治療成績」を掲載いたしました。
●当院では、前立腺肥大症に対する新しい治療である「CVP(接触式レーザー前立腺蒸散術)」を、2020年より期間限定で行ってきましたが、2021年3月に正式に導入し、今後はCVPが常時施行可能となりました。従来の前立腺肥大症の手術治療(TURP・TUEB)よりも出血が少なく、安全性が高い治療です(詳細は、「レーザーによる前立腺肥大症治療」をご参照ください)。
●2020年4月に保険適応となった難治性過活動膀胱に対するボトックス膀胱壁内注入療法を、
2020年10月から開始しました。従来の薬物療法で改善しない尿意切迫感(急に行きたくなる)や
切迫性尿失禁(間に合わない)への、新しい治療法です。
主な手術実績
病名 | 術式 | 2019 | 2020 | 2021 | 2022 | 2023 | |
尿路結石症 | 経尿道的尿管結石破砕術(TUL,fTUL) | 114 | 99 | 134 | 108 | 144 | |
体外衝撃波結石破砕術(ESWL) | 38 | 94 | 153 | 153 | 128 | ||
経皮的腎砕石術(PNL, ECIRS) | 1 | 0 | 0 | 0 | 3 | ||
前立腺肥大症 | 経尿道的前立腺切除術・核出術 | 6 | 57 | 22 | 5 | 0 | |
接触式レーザー前立腺蒸散術(CVP) | – | 13 | 52 | 34 | 29 | ||
膀胱癌 | 経尿道的膀胱腫瘍切除術 | 51 | 79 | 52 | 77 | 42 | |
膀胱全摘術 | 回腸導管 | 3 | 2 | 0 | 1 | 0 | |
尿管皮膚瘻 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 | ||
腎盂・尿管癌 | 腎尿管全摘術 | 開腹 | 2 | 0 | 0 | 0 | 0 |
腹腔鏡下 | 1 | 5 | 2 | 0 | 5 | ||
腎癌 | 根治的腎摘術 | 開腹 | 3 | 0 | 0 | 1 | 0 |
腹腔鏡下 | 3 | 3 | 5 | 3 | 1 | ||
腎部分切除術(開腹) | 0 | 1 | 3 | 1 | 0 | ||
前立腺癌 | 前立腺全摘術(開腹) | 3 | 2 | 2 | 0 | 0 | |
精巣癌 | 高位精巣摘除術 | 1 | 2 | 0 | 0 | 3 | |
尿膜管遺残症
|
尿膜管切除術 | 開腹 | 1 | 0 | 0 | 0 | 0 |
腹腔鏡下 | 0 | 4 | 0 | 0 | 0 | ||
尿失禁 | 尿道スリング手術(TVT, TOT) | 0 | 0 | 1 | 2 | 2 | |
ボトックス膀胱壁内注入療法 | 0 | 1 | 1 | 3 | 2 |
医師紹介
医師名 | 役職 | 専門分野 |
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江﨑 太佑(エザキ タイスケ) | 科長 | 泌尿器科一般 |
楊井 祥典(ヤナイ ヨシノリ) | 医員 | 泌尿器腫瘍、泌尿器内視鏡 |
朝倉 博孝 (アサクラ ヒロタカ) | 非常勤医師 | 女性泌尿器科、排尿機能等 |
大家 基嗣 (オオヤ モトツグ) | 非常勤医師 | 腎癌、泌尿器科癌、腎不全等 |
小坂 威雄 (コサカ タケオ) | 非常勤医師 | 前立腺癌、神経内分泌癌等 |
医師詳細紹介
江﨑 太佑(エザキ タイスケ)
科長
経歴 | 2008年 慶應義塾大学卒業 2008年 慶應義塾大学病院 初期臨床研修医 2010年 慶應義塾大学医学部 泌尿器科学教室 2010年 東京都立小児総合医療センター 2011年 国立病院機構 栃木病院 2012年 東京都済生会中央病院 2013年 慶應義塾大学医学部 泌尿器科学教室 2015年 さいたま市立病院 2020年 練馬総合病院 |
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専門分野 | 泌尿器科一般 |
所属学会等 | 日本泌尿器科学会 専門医・指導医 日本がん治療認定医機構 がん治療認定医 |
医師より一言 | 常勤医2名で、決して規模の大きい泌尿器科ではありませんが、その分患者さん一人一人と親密な関係を作れます。患者さんがご自身の病態をよく理解され、納得・安心して治療を受けられるように、丁寧な説明に努めています。ぜひ気軽に泌尿器科を受診してください。 |
楊井 祥典(ヤナイ ヨシノリ)
医員
経歴 | 2012年 慶應義塾大学卒業 2014年 慶應義塾大学医学部泌尿器科学教室 2020年 さいたま市立病院 2024年 練馬総合病院 |
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専門分野 | 泌尿器腫瘍、泌尿器内視鏡 |
所属学会等 | 日本泌尿器科学会 日本泌尿器内視鏡学会 日本癌治療学会 ロボット手術認定医 医学博士 |
医師より一言 | 誠意を持って対応させて頂きます。お気軽にご相談ください。 |
朝倉 博孝 (アサクラ ヒロタカ)
埼玉医科大学 泌尿器科 教授
専門分野 | 女性泌尿器科、排尿機能等 |
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大家 基嗣 (オオヤ モトツグ)
慶應義塾大学医学部 泌尿器科学教室 教授
専門分野 | 腎癌、泌尿器科癌、腎不全等 |
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小坂 威雄 (コサカ タケオ)
慶應義塾大学医学部 泌尿器科学教室 専任講師
専門分野 | 前立腺癌、神経内分泌癌等 |
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