転倒と大腿骨頚部骨折
~転倒と大腿骨頚部骨折 ~
【なぜ転ぶの? もし転んだら?】
いくつかの原因が重なり合いますが、一番の原因は加齢によるものです。年齢を重ねると、筋力が低下したり平衡感覚が鈍くなったりします。それにより、バランスを崩しやすくなり転ぶことがあります。また、視力が低下することで、足元が見えにくくなり段差に気付かず転ぶことがあります。その他にも、認知症の症状があれば、転倒した状況や環境を忘れてしまい、転倒を繰り返すことがあります。
高齢者が寝たきりになる原因は、脳卒中についで骨折が第2位にあげられます。転倒することで骨折→寝たきりという悪循環を引き起こす原因となります。
大腿骨頸部骨折は転んだり、尻もちをついたりした時に起こりやすい骨折です。歩けなくなり寝たきりになる可能性が高く、手術が必要になってきます。
・ 痛みがある
・ 立ち上がれない
・ 歩けない
・ 足の長さや向きが左右で違う
・ ぶつけたところが腫れてきた
などの症状があったら早めに病院に受診しましょう。骨折していた場合、骨折部の安静が必要です。受診するときは無理して歩かず、救急車を利用しましょう。
【大腿骨頸部骨折と診断されたら】
長期間の安静臥床による寝たきりや認知症、誤嚥による肺炎、床ずれ、筋力低下を予防するために、入院後早期に手術が受けられるようにしていきます。手術をする目的は、患者さんをもう一度歩けるようにして寝たきりにならないようにすることです。手術に向けて、血液検査や心電図、レントゲンなどの検査を行い全身状態を調べます。
手術をうける時は、サプリメントを含めた今飲んでいる薬や今までかかった病気などの情報が重要となってきます。抗血小板薬や抗凝固薬、血管拡張薬などのいわゆる血液をサラサラにする薬や血流を良くする薬を服用している場合は、手術前に中止する必要があります。心臓の病気などで服用している場合は循環器の医師と相談の上、中止できるか判断することになりますので、普段から何の治療の為に飲んでいる薬なのか、自分が飲んでいる薬の内容を把握しておく必要があります。また、急な受診や入院に備えてお薬手帳をカバンの中に入れておきましょう。
【転ばないために気を付けること】
- バランス感覚や柔軟性、筋力を向上させる運動をする。
日常生活の中に軽い運動を取り入れることによって、転倒予防に効果的な足・腰・腹部の筋力アップやバランス能力、歩行能力が改善されます。 - 自分の足にあった、はき心地のいい靴をはく。
安定感のある幅広の靴で、脱げにくく滑りにくいものを選びましょう。また、雨の日、雪の日、風の強い日の外出はなるべく避けましょう。 - 生活環境を整える
住み慣れた家でも、転倒の原因となるものはたくさん存在します。転ばないために生活環境を整えましょう。
①照明
室内が暗いと足元がよく見えず転ぶ場合があります。照明器具を増やしたり、種類を変えることで明るさを確保しましょう。
②床や廊下の障害物
床や廊下が散らかっていたり、家具が置いてあったりすると、動線が確保できず転びやすくなります。床の上で絡まっているコードをまとめたり、カーペットの縁に足を取られないように固定したり、不必要な物は撤去することで、動線を確保しましょう。
③必要に応じて手すりを設置
トイレや浴槽など、立ち上がる際に捕まるものが必要な場所や階段や段差のある場所に手すりの設置を検討しましょう。 - 薬について
転倒の原因の一つに、複数・多数の薬を飲んでいるということも挙げられます。薬によってはめまいやふらつき、脱力感といった副作用が出現する場合がありますので、服薬の指示に従って服用し、様子がおかしいと感じた時には医師や薬剤師に相談しましょう。
身近なところに転倒の危険因子が潜んでいます。危険因子を知り、元気に生活して頂ければと思います。